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御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、ほんの偶然が、私を、、、

掌編人形屋秘譚 奇聞

『人形屋秘譚』其の八、と言いたいところでありますが、
蛇足的物語なので、奇聞、、としました。

少しのお付き合いを。
一話完結であります。


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騙し絵 お礼 

買い出しの帰りなのか、背負い篭に野菜を入れた女が、
小間物屋定勝の店先で売り物の風呂敷に見入っている。

「不思議な柄ですね。」
「えぇ、お客様の心の按配で、なんにでも見える不思議絵です。
 一枚いかがです。ここでしか売っていませんよ。」
お勝が、さりげなく風呂敷を開いてみせる。
「お礼さん、早く帰りましょ。
 いまごろ賢兵衛さんが、痺れを切らして唸ってるわよ。」
連れの女に促されて、帰りかけるが、
「じゃぁ、これとこれと、、、、この四枚くださいな。」
お礼と呼ばれた女が、悩みながら四枚の風呂敷を買った。
この女、、、気づいている、、、お勝は、そう感じた。
お礼が選んだ四枚が、まさにそれを示している。
それとも単なる偶然がなせることだったのか、、、、
「お春さん、ごめんごめん、急いで帰りましょ。」
二人は北之橋を渡って、五間掘り方に去っていった。


夕の七つ過ぎ、いつものようにお輝がやって来た。
待ちかねたようにお勝が話し出す。
「あの風呂敷、四枚揃いで買っていった女がいたわよ。」
「へえぇ、、気づいたのかしら。」
「おそらく、、、」

元々はお輝の発案であった。
定吉の巧みな緊縛下絵を反故にするのが惜しくなって、
風呂敷の絵柄にしたのだ。
一枚の風呂敷に緊縛下絵の一部を入れ、、
周りに不思議な文様を染め抜く。
それだけ見たのでは、花のようでもあり蔦のようでもあり、
風に飛ばされる落ち葉のようでもあり、、、、、。

ところが、風呂敷を五つに折りたたみ、
四種の風呂敷の角を突き合わせると、
しっかりと定吉の緊縛下絵が現れてくる、、、、
これまで、不思議な絵柄というだけで買い求めた客はいたが、
その騙し絵を見抜いた客はいない。

躊躇いながらも的確に選んだ騙し絵四枚の客、、
「その女、どこの女?」
「さぁ、五間掘り方に行ったわ。」
「あたし、、、一度会ってみたい気がする、、、」

騙し絵を見抜いた女、、
同類の匂いを本能的に嗅ぎ分けたお輝であった。


     騙し絵の風呂敷、、、、


 ********  完  ******** 

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じつを言えば的、蛇足のあとがき 

じつを言えば、
お勝、お輝と、居酒屋賢兵衛のお礼、お春の絡みを、、、
という狙いが最初はあったのであります。
それで、人形屋も六間掘りに在る、という設定にしたのですが、
いかんせん、四人が絡む必然性を思いつかず、
こんな小話に落ち着いてしまいました。
まぁ四人が絡んだとしたら、とんでもないSM譚になりそうで、
個人的には、ワクワクしながらも、
読者の皆様に納得していただける展開にするのは難しそうだと、
密かに、風呂敷に仕舞ったままの、今の私であります。



ありがとうございました。
じゃぁ、又。         レイ


 

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