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御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、、、。ほんの偶然が、私を、、、。

掌編江戸人形屋秘譚 其の壱

ちょっと寄り道です。

お盆に紗江さんの料亭でお座敷遊びもどきがあって、
五間掘りの話もしたし、三味線で『深川』も聞かせていただいた。
その時から、江戸物掌編を、又、書きたいなぁ
なんぞと思ってはいたのだけれど、
設定も流れも思いつかないまま、忙しい日々が続いていた。

猛暑、酷暑と騒がれた夏だったが、
盆明けと共に季節が秋に移ろうとしている。
あぁ、季節の移ろいの中で江戸風物を描けたら楽しいかなぁ、
そんな事を考えて、今回の物語をひねり出した。

場所は本所六間掘り、とある人形屋のお針子、お輝の物語。
とりあえず全三話、、、

お代は読んでのお帰り、、
御用とお急ぎのない方は、遊んで行ってください。



**************************

吊るし雛 お紺


お針子として、六間掘り近くの人形屋に職を得たお輝であったが、
まだまだ新参者、ここのしきたりは何も知らない。

「お披露目ぇ、お披露目ぇ、、、、」
霜月晦日、夜も更けて、もう床に入ろうとする頃に、
番頭の大声が、裏長屋中に響き渡る。

長屋の同じ部屋に暮らす先輩お針子のお勝が、
なにごとかとおろおろするお輝の掻巻を剥ぎ取り、飛び出す。
井戸端に集まった女達は、全員湯文字一枚で震えている。
冷たい夜風は、容赦なく女達の肌に突き刺さり、
両肩を抱えた腕の隙間から、その乳首さえももぎ取ろうとしている。
逆さ吊るし雛 お紺、、、、
「この度、目出度くも、上女中お紺が柊屋さんに見初められた。
 その鍛錬の成果を今夜披露する。」
番頭の口上で、前に引き出されたお紺。
肩から滑り落ちた寝間着の下の後手縛りの裸身が、
小さな篝火の明かりで揺らいでいる。
三人がかりで桜の樹に逆さに吊られたお紺に、
番頭がささらの鞭を振るい、
「逆さ吊るし雛、生き人形お紺のお披露目、、、、」と。
お紺の叫びと、それを見つめる女達の控え目な拍手は、
たちまち北風でどこかへ飛ばされてしまう、、、、、


長屋に戻っても、お輝は興奮して、眠るどころではない。
「あれはいったいなんだったんですか? 
 見初められたはずのお紺さんが、なんであんな格好なの?
 鍛錬ってなに?」
傍らのお勝に詰め寄る。
「見初められたと言っても、
 嫁ぐわけでも囲われるわけでもない。大枚で売られたのよ。
 きっと柊屋さんの特別注文だったんでしょ。」
「特別注文って?」
「表店の人形職人は、季節の人形職人であると同じくらいに、
 腕のいい生き人形職人でもあるらしいわ。
 大店や御武家さんの好みに合う生き人形をこさえるのが特別注文。
 女中を生き人形に変えていくのを鍛錬というらしいわ。」
「でも、上女中さんって、嫁入り前の行儀見習いでしょ。」
「世間体はそうだけど、ここでは違うわね。
 この長屋のお針子や下女中からも上女中にさせられて、
 母屋で暮らすようになった女が何人もいるわ。」
「生き人形にされちゃうの? あたし達もそんな事があるの?」
「あんた、質問が多すぎるわ。」
「でも、なんか怖い。」
天井板のない長屋の冬の寒さはとりわけ厳しい。
それでも掻巻にくるまって、二人のひそひそ話は続く、、
「そんな怖がってばかりいてもしようがないわ。
 お紺さんが生き人形になったおかげで、いい事もあるのよ。」
「いい事って?」
「明日はお紺さんの御輿入れの日だから、
 邪魔なお針子と下女中はお休みなの。
 紅白の餅と小遣い五拾文が配られて、、、、
 見て見ぬふりをしろ、というわけ。」
「でも、本当の御輿入れじゃぁないんでしょ。」
「だからそれは建て前よ。
 馬でなのか輿で行くのかは知らないけど、
 人目が無くなった途端、
 犬猫のように四つん這いで御輿入れ、かもしれないわね。
 あたし達はそんなこと知ったこっちゃないわ。
 せっかくのお休みだから、広小路の見世物に行きましょか。
 五拾文あれば、甘い飴菓子も天婦羅もたべられるわ。」


お紺の犠牲で得られる休みと五拾文が腑に落ちないお輝だった。
しかし、あの逆さ吊るし雛になったお紺の表情が、
叫びとは裏腹に、陶酔さえも感じているように思えたのは、
薄暗がりのせいだったのか、目の錯覚だったのかと、
いつまでたっても眠りの浅いお輝であった。




 ******** つづく ******** 

 

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コメント


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待ってました、

居酒屋のお礼、お春じゃなくて、
新たなお話なんですね。
さぁどんな展開になるのかなぁ、、、
 

匿名さん | URL | 2015年09月04日(Fri)17:44 [EDIT]

匿名さん、ありがとうございます

良し悪しは別として、
作者の勝手な妄想が、江戸物のほうが広がりやすいとは思うのですが、
あまりいい加減でも、、、って自主規制的制約も感じております。
お礼、お春をご存じってことは、
いつもご愛読いただいているんですね。
次回はお名前教えてくださいね♪
ありがとうございました。
じゃぁ、又。        レイ
 

Ray | URL | 2015年09月04日(Fri)21:08 [EDIT]