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御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、、、。ほんの偶然が、私を、、、。

掌編江戸人形屋秘譚 其の弐

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かざぐるま お鈴


師走の十四、十五日は深川八幡の歳の市。
目のまわるような忙しさで作りためた正月飾り羽子板を、
手代や丁稚と一緒に大八車で八幡様まで運び、
声を枯らして客を呼ぶ売り子もお輝の仕事だった。

疲れ果てて裏長屋に戻り、井戸端で足を流すお輝に、
「お疲れさんでした。」
と声をかけてきた下女中がいた。
同じ裏長屋に住いながら、
下女中とお針子は、ほとんど話をしない。
井戸端で顔を合わせても、下女中は黙って目を伏せるだけ。
母屋に暮らす職人、上女中とまではいかないまでも、
お針子は下女中よりは上の位と定められている。
お輝がここに来たばかりの頃、そんな事とはつゆ知らず、
誰彼かまわずのお輝の自己紹介に、
「あたし、お鈴です。」と答えた下女中がいた。
お疲れさん、の声は、そのお鈴であった。
お輝は、自分で柄決めした羽子板が売れた時の喜びを、
何度も何度もお鈴に話して、、、
お鈴も、自分の事のように喜んで、何度も何度も頷いて、、
そして、、、
「お輝さん、こんな下女とお話ししてくれて、
 あたしは、とっても嬉しかったです。ありがとうございました。
 あたし、上女中になるよう、番頭さんに言われました、、」
釣瓶桶の水が着物の裾を濡らすのにも気づかず、
あんぐりした口から、お輝はようやく言葉を発することができた。
「お鈴さん、、、上女中に呼ばれた意味を分かってるの?」
「あい、分かっているつもりです。
 あたしは、口減らしのように在から出てきましたから、
 帰る実家もありませんし、身を立てる術もありません。
 せめて、お輝さんのようなお針子さんになりたかったです。」

事情は違えど、お輝とて帰る実家はない。
早くに親を亡くし伯母に育てられたお輝は、
初潮がきて二年目には、追いだされるように結婚させられた。
婚家にとって必要なのは、お輝の労働力と跡継ぎを孕む子宮だけで、
子を孕みそうもないお輝に、離縁状が突き付けられたのは、
三年目の初秋であった。
生来の器用さと、労働力としていつの間にか鍛えられた針仕事で、
今、この人形屋のお針子として働いている。



人形屋には、正月も、ましてや正月藪入りもない。
弥生人形作りに追われて瞬く間に過ぎた睦月晦日、、、、、
「お披露目ぇ、お披露目ぇ、、、、」
夜も更けたころ、番頭の大声を又、聞く事となった。
お輝は、嫌な予感にかられながら、湯文字姿で井戸端に急ぐ。
集まった女達をかき分け、一番前に進み出ると、、、
やはりそうであった。
死衣装のような白い寝間着が肩から落ちる。
亀甲に縛られたお鈴が、胸を張らんばかりにすっくりと立っていた。
絞り出された乳房さえも、なぜか誇らしげだ。
「この度、目出度くも、上女中お鈴が上州屋さんに見初められた。
 その鍛錬の成果を今夜披露する。」
かざぐるま お鈴、、、
それから、女囚を問い詰める拷問縛りのように吊るされたお鈴。
股も割れ、見つめるお輝にすべてを晒している。
「吊るしかざぐるま、生き人形お鈴のお披露目、、、、」
番頭が何度もお鈴の体を押し回転させ、そのまま手を放すと、
ねじられた吊り縄の反動で、お鈴は逆に回り出す。
苦痛の呻きをあげながら、目は前を見据え、
回転のたびに、しっかりお輝と目を合わせようとするお鈴、、


回り続けるお鈴のあられもない裸体に、
別れの涙を流しながら、いつまでも拍手を送り、
せめてもの幸があらんことを願うお輝であった。




 ******** つづく ******** 

 

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コメント


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しっかり

SM掌編なんておっしゃいながら、
しっかり人情物じゃぁ、ないですかぁ。
何度も読み返して、感情移入して泣いちゃいました。
 

kaibo | URL | 2015年09月05日(Sat)14:29 [EDIT]

kaiboさん、ありがとうございます

そうですねぇ、
バックグラウンドにSMがあろうとなかろうと、
しっとりじんわりを目指しているのですが
なかなかうまくの表現に苦労している、というのが、
今の私であります。
それなりの、じわっ、、を感じていただけたのなら、
何よりの悦びであります。

ありがとうございました。
じゃぁ、又。       レイ
 

Ray | URL | 2015年09月05日(Sat)20:32 [EDIT]