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御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、、、。ほんの偶然が、私を、、、。

掌編居酒屋賢兵衛 一口話

今日はちょっと寄り道。

「土偶(どぐう)と言うから、木偶(もくぐう)でも間違いじゃないが、
 やっぱり、でく、って読んで欲しいなぁ。
 ほら、木偶の坊って言うだろ。あのデクだよ。」
かつてそんな会話があって、
木偶人形自体に罪はないものの、
否定的に使って、物語になりそうだぞ、って思い続けてきた。
満を持して、、と言うほど完成された物語ではないけれど、
居酒屋賢兵衛にからめて、小話を書いてみた。
江戸話を書きたいのに、うまい題材がなかった、、
というのが本当のところかもしれないけれど、、、

初めてこの江戸物をお読みになる方は、
居酒屋賢兵衛をご一読いただけると幸いです。


一口話ですので、一話完結です。
ご用とお急ぎでない皆様、しばしのお時間を、、


************************

木偶人形

「御主人、この娘で、もう一本、飲ませてくれんか。」
「いえいえ、掛け売りはお断りしておりやす。」
「掛けではござらん。代金はこの女だ。」
「お客様、うちは質屋ではありません。
 たとえ質屋であっても、生ものは扱いかねるでしょう。」
「いや、元来がこの娘、借金のかたで手に入れたもの。
 いわば、質流れの品。木偶人形と思ってくだされ。
 子供が遊ぶ木偶人形もあれば、大人が遊ぶ木偶人形もござろう。
 ほれ、このようにな。」

「ほう、、、これはこれは、、、
 して、この質草木偶人形をあっしが質預かりしたとして、
 質受けはいかようになさりますか。」
「流してくれてけっこう。この木偶は、もう飽きたからなぁ。」
「それではこの娘、薄幸に薄幸を重ねるようなもの。
 あまりに理不尽で哀れではござんせんか。」
「いや、この娘、縄で縛られ虐げられて悦ぶ被虐の性なれば、
 御主人、煮て喰うなり焼いて喰うなり、
 質草でどこかに売り飛ばしても、ご存分に。」

「お礼、一升徳利、持ってきな。
 お客様、この一升で、確かに質預かりいたしやした。
 質流れでよいってなら、質札は出しませんぜ。
 そして、、、、、
 その徳利を返せとは言わんで、さっさと帰ってくだせぇ。
 情の無ぇ男は男じゃぁねぇ。
 二度とここに顔を出すんじゃねぇぜ。
 お春、塩撒きな。」



「ありがとうございました。あたし陸と申します。」
「郷はどこだ。」
「戸田の渡し近くの水呑み百姓の娘でしたが、
 あたしが借金のかたに取られた後、
 お父ぅもお母ぁも、兄ぃも、離散したと風のうわさで、、」
「それでは、お陸は、これから独り立ちせねばいかんなぁ。」
「どうせ、あたしは木偶人形で生きてきました。
 なんとかなります。どこかに売り飛ばしてください。」
「どうせ、、とか言うもんでない。
 自分を安売りするな。
 有馬屋の番頭が下働きの娘を欲しがっていた。
 そこを紹介してやるから、地道に働け。」
「あたしなんかが、まっとうに働けるでしょうか。」
「世間の闇と底を覗いちまったお前だ。
 あとは、前だけを向いて生きていきな。
 もし、お前の被虐の性が疼いたら、藪入りにでも尋ねて来い。」
 お礼やお春と一緒に虐めてやるから。」



有馬屋の番頭から、真面目に働いているという話は聞いたが、
藪入りの日に、お陸がここを訪れる事はなかった。
「うん、それでいい、、、」
お陸の小さな幸せを願う賢兵衛であった。



 ******** 完 ********


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哀悼のあとがき


居酒屋賢兵衛は、宇江佐真理さんの『鳳来堂』を真似ている、
と、かつて書いた。
連作長篇『夜鳴きめし屋』である。
そのなかの『五間掘りの雨』から雨のイメージをいただいた。

その宇江佐真理さんが昨年11月にお亡くなりになった。
遅ればせながら、市井の片隅より哀悼の意を捧げます。


江戸に詳しいわけでもなく、新しい発想ができるわけでもないので、
『居酒屋賢兵衛』にしがみついて、
これからも江戸物を書いてしまうに違いない私。
素敵な遺産をお分けいただいたと、勝手に解釈いたしております。


こんな卑猥なブログで申し上げるのも気が引けますが、
安らかにお眠りください。

                   レイ


 

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コメント


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お久しぶりです

しっとりした人情SM掌編ですね。
会話だけでの物語、新たな挑戦かしら?
こんな一口話もいいですねぇ、これからもお待ちしています。

レイさんに感化されて、私も宇江佐真理さんを何冊か読みましたが、
お亡くなりになって残念です。乳癌だったとか、、、
 

kaibo | URL | 2016年06月18日(Sat)18:24 [EDIT]

kaiboさん、ありがとうございます

ほんとはね、、もうちょっと練り直して、
ほろっとするような人情物が書きたいんです。
なかなか掌編では安直に起承転結するのが難しいなぁ、、、
というのが、今の私の思いであります。

宇江佐真理さん、、残念であります。
私は、それほど熱心な読者ではなかったのですが、
それぞれの小説で、たくさんの影響をうけました。
そんな想いで、『素敵な遺産』なんて書いてしまいました。

ありがとうございました。
じゃぁ、又。        レイ
 

Ray | URL | 2016年06月18日(Sat)20:35 [EDIT]

行為がない事が、逆にハッピーエンドになることもあるんですね。。。
上手く言えませんが、そんな風に思いました。

最後の賢兵衛さんの言葉は、、、
(主様の過去を見てきたわけでもないのに)何人も従者を手放された主様のお言葉に感じ、ちょっと切ない気持ちにもなっていました。

雪絵 | URL | 2016年06月19日(Sun)16:19 [EDIT]

雪絵さん、ありがとうございます。

かつて、相棒のハルに、
「ハッピーエンドと思わせて、実はバッドエンド、、
 そんな展開もありじゃない? それが現実、、」
そんな指摘をもらったことがありましたけれど、
たとえ薄幸であろうと、小さくてもいいから、ハッピーエンド、、
いろいろ掌編をひねくりながら、結局はそこに落ち着いて、
読者の皆様はどう思っておられるかは別として、
私自身が妙に納得してしまっている、というのが本当のところです。

ありがとうございました。
じゃぁ、又。        レイ
 

Ray | URL | 2016年06月19日(Sun)21:23 [EDIT]