FC2ブログ

御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、、、。ほんの偶然が、私を、、、。

掌編縄雨捕り物控 捕り物其の弐

************************

掏摸(すり) お吟 

「明日から祭かぁ、、大雨でも降らんかなぁ。」
槙次郎の溜め息に、板場で裁縫するお光が苦笑をもらす。
「二年ぶり、皆が楽しみにしている神田明神様のお祭りですから、
 そんな事、おっしゃるものではありません。」
今でこそ槙次郎の女中ではあるが、元々は兄嫁。
時々、母親のように槙次郎をたしなめたりもする。
「雨となれば、人混みも減って、喧嘩も掏摸もなくなる。」
「そのお役目でお給金いただいてるんですよ。」
「たかだか、参拾俵二人扶持だぞ。
 大雨になれば、須崎でおめぇを逆さ吊りに縛れるのによぉ。」
「あいあい、それができるのも、
 しっかりお役目を果たしてからですよ。」
もちろんお光も、雨を待つ一人ではあったが、、、、


三十六台の武者山車が町を駆け巡る。
それを見ようと人が集まり、掘立出店が軒を連ね食い物を売る。
人が集まれば、喧嘩が始まり、掏摸が横行する。
槙次郎にとってはあいにくの晴天であった。

何件かの喧嘩を仲裁し、何人かの掏摸を取り押さえて、
木陰で大息をついた時、その女が槙次郎の目にとまった。
飴細工屋の前に人だかりができている。
その女はいかにも後ろから押されたふうに装って、
前の男の巾着の紐を切り取り、
その巾着を自分の袂に入れようとした。
槙次郎はその手首をつかみ、素早く取り押さえた。
見れば、女はまだ若い娘であった。


自身番に番頭が飛び込んでくる。
「こちらは妙義屋のお吟お嬢様。
 悪い奴らにたぶらかされて、こんな事をしちまって。
 どうかこれで、お目こぼしを。」
袂の重みが、五両と言っている。
「番頭はん、お吟の手業は素人同然。ほんの遊び心だろう。
 おめぇがしっかり更生させるんなら、今回だけは許す。」
捕縛の縄を解いても、お吟は呆けたように立ち上がれずにいる。
番頭と女中が抱えるようにして、やっと帰っていった。




師走の声を聞くと、誰もかれもがせわしなく小走りだ。
町廻りの槙次郎に、一人の女が声をかけてきた。
「えっとぉ、おめぇは、、妙義屋お吟。」
「今は、蝋燭問屋山城屋のお吟ですけどね。」
番頭の更生手段は、嫁がせる、、という事だったらしい。
「その若女将が、いったい何用でぇ。」
「ちょいと槙様にご相談があって、、、。
 お恥ずかしい話ですけんど、あたし、、、、
 槙様の捕縛の縄が忘れられないんです。
 今だって、その懐の十手を掏ったらまた縛っていただけるかと。」
自身番で、緊縛に酔うお吟の姿を思いだす槙次郎であったが、
「そんな事ぁ、俺の知ったこっちゃねぇ、旦那に頼みな。」
「それができないから、こうしてご相談を、、、、
 内の旦那は、吝嗇で堅物で、跡継ぎを作る事だけ考えて、、
 女の悦びなんてどうでもいい人なんです。
 女からこんな事をお願いするのは、変態でしょうか、
 不貞なんでしょうか。」
「変態でもそれが自分の性の癖なら、いたしかたあるまいよ。
 不貞かどうかなんて事は、自分で決めるこったな。」



「雪か、、、」
槙次郎の観天は少し外れた。
須崎の隠居家には冷たい氷雨が降り続いている。
雨戸が閉ざされた薄暗い板場、
天窓からの明りだけで、二匹の牝が緊縛を受けている。
一匹はもちろん女中のお光。
そしてもう一匹は、そう、山城屋お吟であった。
お光のあられもない喘ぎに対して、
お吟は、後ろ手にきつく縛られながらも、凛と背を伸ばして、
時に小さな吐息をもらしながら、縄に酔っているかのようだ。

お吟はこの緊縛の快感を思いだしながら、旦那に抱かれるのか。
元気な、いい子を産めよ。
お吟の行く末に幸多からんことを願う槙次郎であった。



 ******** つづく ********

 

PageTop

コメント


管理者にだけ表示を許可する