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御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、、、。ほんの偶然が、私を、、、。

掌編縄雨捕り物控 捕り物其の九の壱

今日はちょっと寄り道。

十月半ばとしては、六十数年ぶりの最低気温、、
そんな報道があったほど、今年の秋の冷え込みは急だった。
冷え性なんて関係ない、などと言っている私もハルさんも、
ソックスを履いたまま布団に入りたい、そんな気分だった。
えっ?、、江戸時代の庶民はどうしてたのかしら、、、
そんな思いから、この物語をひねり出した。

稚拙だけどそれっぽい推理と、それっぽい情感と、、、
うまく書ききれたとは思わないけれど、
それなりにまとめてみました。

お暇でしたら、江戸の推理もどきをお楽しみください。
三話完結です。


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失せ足袋 お嬢 


「わたくし足袋問屋近江屋大番頭の喜助でございます。」
「その大番頭が、こんな処で拙者に何用かな。」
「じつは、槙次郎殿にご相談したき事がございまして。」
「今の季節、町廻り同心の役目はご存じか。」
「はい、混みあう客を狙った盗人を捕える事かと。」
「いや、違うな。
 どこの団子屋が一番うまいか探索しておるのよ。」
「おぉ、それでは、あの茶店で、ご一献。」
袂に入れられた金子、、ちりんとも言わなかった、、、
一両か、、一両に団子と酒。
その程度の『ご相談』ということか、、、、


「じつは、、最近、足袋がしばしば失せまして、、」
「足袋が失せる、、、店からか。」
「そうではありません。店には番頭も手代もおりますし、
 特に一見のお客様には、間引き盗みなど無いよう、
 さりげなく目を遣っておりますので。」
「それでは、どこから失せると。」
「お嬢様の足袋でございます。」
「お嬢の足袋とな、、。」
「熟練職人に丹精込めて作らせたお嬢様の足袋だけが、
 忽然と消えたりいたします。
 先日も、お気に入りの足袋が見当たらないと、
 お嬢様が泣いておられました。」
「うんうん、、、このみたらし団子はうまいな。
 まぁ、女を知らぬ丁稚や手代、、、
 あるいは助平な番頭の仕業じゃねぇのか。」
「いえいえ、
 お嬢様の衣類に触る事ができるのは、上女中だけです。」
「それじゃぁ、そいつが下手人だろう。」
「その上女中は、先代の女将さん、若女将さん、お嬢様と、
 三代にわたってお仕えしていますので。
 けっして、そのような事は、、、、」
「それでは、新しい足袋が欲しくなったお嬢自身の仕業か、
 それとも鼠の仕業であろう。
 おい、この団子、もう一皿、食ってもいいか。」
「どうぞどうぞ、おぉぃ、みたらし一皿と漬けもんと酒じゃ。
 槙次郎殿、下手人をひっ捕らえるよき策はありませぬかなぁ。」
「策も何もいらん。下手人は分かった。」
「今の話だけでもうお分かりですか。お聞かせくだされ。」
「そう急かすな。ひと月ほど刻をくれ。
 師走までには足袋が失せる事はなくなるだろうさ。」


もの問いたげな大番頭と別れた槙次郎は、
岡っ引きの茂蔵を呼んで、近江屋の探索を命じた。
「近江屋ですかぁ、、
 あすこは巷の評判がなかなかいい店ですぜ。
 特に奉公人への躾が厳しく、客も褒めてるっちゅう噂です。
 逆にいやぁ、その躾に奉公人の不満が溜まる、、、
 そんな事もあるかもしれやせんが。」
「奉公人の不満かぁ、、、
 そんな不満は、あの大番頭なら気づきそうな気がする。
 それに、お嬢の足袋を盗むなんざぁ、いかにも幼稚だ。
 そこに何かあるような気がすんだけどな。」
「あい、手管を弄して裏からそっと調べてみやしょう。」


冷たい辻風が枯葉を舞い上げている。
「失せ足袋かぁ。
 下手人は捕まえたくねぇなぁ。」
思わず首をすくめながら、槙次郎がつぶやいた。



 ******** つづく ********


 

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