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御主人様と二匹の奴隷達の物語

レイが綴る牝奴隷ハルとレイの物語、、、、、。ほんの偶然が、私を、、、。

掌編縄雨捕り物控 捕り物其の九の弐

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下手人 お八重 

「槙次郎殿、このところ足袋が失せる事はなくなりました。
 ご尽力、ありがとうございました。
 して、下手人は誰だったのでしょうか。」
「さぁなぁ、足袋が失せなくなれば、それでよいではないか。」
「これはこれは失礼をば、いたしました。」
袂に差入れられた金子がちゃりんと音をたてた。
「して、下手人は、、、」
「お前の処の足袋、いかほどいたす。」
「それは、ぴんからきりまでございます。」
槙次郎は袂に入れられた三両を突き返しながら、
「ではこの金で、下女中、下女に足袋を履かせろ。
 金を払った客との約束は、きちんと守れよ。」
軽くなった袂をひるがえし立ち去る槙次郎。
大番頭は茫然と見送りながらも、やがて商人の顔に戻り、
「ありがとうございます。しかと承りました。」
もちろんその真の意味を知るはずもなかったが、、、





茂蔵の探索は驚くほどであった。
奉公人達の、出生はもちろん、奉公の経緯も、
日頃の生活も、微に入り細にわたって調べあげた。
「手代や番頭なんぞは、
 使いのついでに料理茶屋の二階の女買いで憂さ晴らし。
 そんな事もあるようですが、
 さすがに住み込みの上女中達は、そうはいきやせん。
 店に対する不満というよりは、女特有の憂さが溜まり、
 その捌け口を下女中に向けられているらしく、
 十日に一度は土蔵から下女中の叫びやすすり泣きが、
 聞こえてくることがあるんだそうで、、、、、」
「そうだとしても、それがお嬢の失せ足袋とどう繋がる。」
「お嬢も時には興にまかせて下女中達を、、もあるでしょう。
 それで下女中が恨みをもって、では。」
「そう見えたとしても、理屈としちゃぁちと弱いな。
 ところでお前ぇ、下手人の察しはもうついてんだろ。」
「へぇ、その辺はぬかりなく調べやした。
 お嬢の足袋を洗濯するんは、下女中のお八重です。」
「やはり下女中であったか、、、
 はて、いかにその証を突き付けようかのう。
 ここからの探索は、、、お光の仕事かもしれんな。」


使いの途中なのであろう、素足に草履の娘が目の前を歩いている。
「足袋問屋といえども、下女中は素足なのか。」
そう思いながら、槙次郎は娘の肩に手を掛ける。
「近江屋下女中のお八重だな。」
振り向いたお八重、そこにいるのが同心と知ると身を硬くする。
「そう身構えるな。手間は取らせぬ。
 寒いな、そこの茶屋でちと話を聞きたい。」
失せ足袋の下手人はお八重に違いないが、
表の動因ならともかく、訳ありの裏事情となると、
男の、ましてや同心の尋問ではちと荷が勝ち過ぎる。
茶屋で待っていたのは、お光であった。
「お八重、使いは届け物か。その仕事、拙者が引き受けた。
 女どおしでゆるりと茶を楽しむがよい。」
「さぁ、邪魔な男がいなくなったから、
 ゆっくりお話聞かせてくださいな。」
茶屋を出る槙次郎の背後で、そんなお光の声が聞こえた。




 ******** つづく ********


 

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